法定点検

消防設備点検

消防設備点検は専門的な知識を持った消防設備士や点検資格者によって定期的に点検を行い、消防機関に報告する義務が消防法により定められています。

(消防法第17条の3の3)

報告を怠った場合には、消防法第44条に則り立入検査などの指導が行われます。
それでもなお報告がなかった場合には、30万円以下の罰金または拘留の罰則が課されるため、消防設備点検は必ず行う必要があります。

対象となる施設

  • 延べ面積1,000㎡以上の防火対象物
  • 地階又は3階以上の階に特定用途(物品販売店舗、ホテル、病院、飲食店など不特定多数の人が出入する建物等)があり、 かつ、階段が屋内1系統のみのもの

消防設備点検の内容

消防設備点検は「機器点検」と「総合点検」があります。

機器点検

消火器など消防設備の外観や設置場所など適切に運用されているかどうかを確認します。

消火器などの設備機器がきちんと機能しているかといった事柄も確認します。

対象となる消防設備は消火器具のほかに、火災報知設備や警報器具、スプリンクラー、誘導灯など、設備によりさまざまです。

総合点検

総合点検とは、1年に1度実施する消防設備の機能をチェックする点検作業です。
設備を動かし、総合的な動作確認を行います。

消防設備点検の頻度

機器点検 6ヶ月に1回
総合点検 1年に1回

防火対象物点検

年に1度、防火対象物点検の資格を持つ者に防火管理上必要な業務等について点検を依頼し、その結果を消防署に報告する義務があります。

点検報告を怠った場合には、30万円以下の罰金が科せられることがあります。

対象となる施設

収容人員が30人以上 の建物で次の要件に該当するもの

1. 特定用途部分が地階又は3階以上に存するもの (避難階は除く)
2. 階段が一つのもの

特定の建物(特定防火対象物)で収容人員が300人以上のもの
百貨店、遊技場、映画館、病院、老人福祉施設等

※その他条件により点検が必要な場合もございます。

防火対象物点検の内容

  • 防火管理に係る消防計画に基づく事項の履行確認
  • 防炎対象物品の使用
  • 火気使用設備等の適切な管理
  • 少量危険物、指定可燃物の貯蔵及び取扱い
  • 消防用設備等の設置維持
  • 避難施設の管理その他火災予防上必要な事項等の実施状況

防火対象物点検の頻度

1年に1回

防災管理点検

防災管理点検報告とは大規模な防火対象物の管理権限を有するものは、防災管理点検資格者に建物の地震対策等の災害時に必要となる事項について1年に1回点検をさせ、その結果を消防署長に報告する制度です。

(消防法第36条一項)

対象となる施設

<大規模な防火対象物>
劇場/飲食店/ホテル/学校/公衆浴場/神社・寺院/駐車場/文化財である建築物/風俗営業店舗/百貨店/病院・福祉施設/図書館・博物館/車両/工場/その他事業場/地下街

1項~17項
※共同住宅(5項口)、格納庫など(13項ロ)、倉庫(14項)は含まれれない

条件

  1. 11階以上 1万㎡
  2. 5階以上10階以下 2万㎡以上
  3. 4階以下 5万㎡以上
  4. 1,000㎡以上の地下街

防災管理点検の内容

  • 耐震措置の点検(地震対策)
    家具などの転倒、落下、移動防止措置の確認
  • 十分な非常食の備蓄
  • 防災管理者の選任・届出
  • 消防計画の作成・届出
  • 自衛消防組織の設置・届出
  • 防災管理点検・報告

防災管理点検の頻度

1年に1回

防火設備定期検査

防火扉や防火シャッターなどの「防火設備」に重点を置いた検査です。火災事故による被害を最小限に抑えることを目的としており、建築基準法で「定期報告」が義務づけられている法定検査です。

(建築基準法第12条)

平成25年に発生した福岡市の診療所火災事故において、火災時に自動閉鎖するはずの防火扉が正常に作動しなかったため、多くの犠牲者がでました。この事故をきっかけに防火設備点検の規定が強化されました。

防火設備定期検査を怠ると「100万円以下の罰金」や、実際に事故が発生することで行政処分の罰金だけでは済まされない可能性もあります。

検査を定期的に実施することにより設備の異常を早めに発見することもでき結果的に維持管理費用の削減にもつながります。
「建築設備点検」と同時期に行うことが多い点検です。

対象となる施設

  • 病院・診療所や高齢者・障害者等の高齢者などの就寝の用に供する建築物
  • 多くの不特定多数の方が出入りする建物(体育館(学校に附属しないもの)、旅館、ホテル、博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツの練習場)
  • 百貨店、展示場、キャバレー、カフェ、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、飲食店、物品販売業を営む店舗
  • 上記に加え、地方自治体(特定行政庁)が指定する建築物
    ※特定行政庁によって検査条件が異なるために検査対象がどうかは必ず事前にご確認ください。

点検対象設備

防火扉

防火扉は、火災時に閉鎖し火災の被害を最小限に防止できるように設計された扉のことです。
正常に作動し感知器との連動が問題なく行われることを目的とした検査を行います。

  1. 防火扉の付近に物品が放置されていないか
  2. 扉の取付が堅固にされているか
  3. 防火扉が規定スピード以上で閉まるか

※ 3の検査は、消防点検(任意)では行いません。

   

防火シャッター

防火シャッターとは建物内の「防火区画」を構成するために設けられたシャッターのことです。正常に作動し感知器との連動が問題なく行われることを目的とした検査を行います。

  1. シャッターの下に物品が放置されていないか
  2. 駆動装置が故障していないか
  3. 危害防止装置が正常に働くか
  4. 防火シャッターが規定スピード以上で閉まるか

※ 2,3,4の検査は、消防点検(任意)では行いません。

   

耐火クロススクリーン

耐火クロススクリーンはエレベーター前に設置されていることが多く、火災が発生したときに、耐火性抜群の軽量クロスが天井裏から降下し、防火・防煙区画を速やかに区分けするシステムです。
正常に作動し感知器との連動が問題なく行われることを目的とした検査を行います。

  1. 耐火クロススクリーンの下に物品が放置されていないか
  2. 駆動装置(耐火クロススクリーンを動かす装置)が故障していないか
  3. 耐火クロススクリーンが劣化・損傷していないか
  4. 危害防止装置が正常に働くか

※ 2,3,4の検査は、消防点検(任意)では行いません。

   

ドレンチャー

ドレンチャーとは、周囲で起きた火災から延焼を防ぐために設置される防火装置の一種です。ヘッドと呼ばれるノズルから水を放出し、建物を水幕で包むようにして、もらい火などを防ぎ、火災から建物を守ります。

正常に作動し感知器との連動が問題なく行われることを目的とした検査を行います。

※一般的なビルやマンションに設置されていることはあまりなく、各自治体が制定している火災予防条例に従って、空港や駅、開放型の立体駐車場のほか、歴史のある文化財構造物などに設置されます。

  1. ドレンチャーの付近に物品が放置されていないか
  2. 散水ヘッドが正常に水幕を形成する場所に設置されているか
  3. 散水ヘッドに塗装や異物で詰りがないかどうか
  4. 貯水槽や給水設備が劣化・損傷・変形していないか

防火設備定期検査の頻度

防火扉 1年に1回
防火シャッター 1年に1回
耐火クロススクリーン 1年に1回
ドレンチャー 1年に1回

特定建築物定期検査

特定建築物として指定された不特定多数の人々が利用する建築物を対象に、利用者の安全を守ることを目的に行う法定点検です。「敷地および地盤」「建築物の外部」「屋上および屋根」「建築物の内部」「避難施設・非常用進入口」といった現行法規等に基づき建築物の現況を調査し、その結果を特定行政庁へ報告します。

(建築基準法第12条)

調査の対象となる建物は、政令で一律に指定されています。また政令以外でも、地域の実情に応じて特定行政庁が調査対象を指定しています。建築物の所有者・管理者は、必ず双方の対象および条件を確認するように注意しましょう。

検査は無資格ではできません「一級建築士」「二級建築士」の他に、法定講習を受けて、特定建築物調査員証の交付を受けた「特定建築物調査員」の資格を取得した担当者が行います。

対象となる施設

劇場、映画館、演芸場

  • 3階以上もしくは地下の階にあり、用途に供する部分の床面積が100㎡を超える場合
  • 客席の床面積が200㎡を超える場合
  • 主階(舞台・客席等の出口がある階)が1階にない場合で、用途に供する部分の床面積が100㎡を超える場合

観覧場、公会堂、集会場

  • 3階以上もしくは地下の階にあり、用途に供する部分の床面積が100㎡を超える場合
  • 客席の床面積が200㎡以上の場合

病院、有床診療所、旅館、ホテル、就寝用福祉施設

  • 3階以上もしくは地下の階にあり、用途に供する部分の床面積が100㎡を超える場合
  • 2階の床面積が300㎡以上の場合
    ※病院、有床診療所は、2階の部分に患者の収容施設があるものに限定される

体育館、博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツの練習場

(いずれの建物も、学校に付属する場合は除外されます。)

  • 3階以上の階にあり、用途に供する部分の床面積が100㎡を超える場合
  • 床面積が2,000㎡以上の場合

百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェ、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店、飲食店、物品販売業を営む店舗

  • 3階以上もしくは地下の階にあり、用途に供する部分の床面積が100㎡を超える場合
  • 2階の床面積が500㎡以上の場合
  • 床面積が3,000㎡以上の場合

特定建築物定期調査の種類

敷地・地盤

敷地内の地盤沈下による不陸状態(水平でなく凸凹がある)や敷地内の排水状況は適切かを調査するとともに、災害時を想定した避難通路等の確保ができているかなどを調査します。

   

【検査内容】

  • 地盤沈下による不陸、傾斜等の状況
  • 敷地内の雨水の排水状況
  • 敷地内通路の有効幅員の確認、障害物の有無
  • ブロック塀等の耐震対策、劣化および損傷の状況
  • 擁壁の劣化および損傷の状況

   

建築物の外部

建物の基礎や外壁、窓サッシ、外壁に設置されている広告板等について、主に落下につながるような経年劣化や損傷箇所がないかを目視、テストハンマー等による打診を行い調査します。

   

【検査内容】

  • 基礎の沈下等の状況
  • サッシの劣化状況、はめ殺し窓のガラス固定の状況
  • 外装仕上げ材の劣化状況
  • 外壁開口部の防火対策の状況
  • 広告板等の劣化状況

   

屋上および屋根

屋上面や屋上回り、屋根に不具合や漏水の原因となる劣化・損傷がないか目視、テストハンマー等による打診を行い調査します。

   

【検査内容】

  • 屋上面(防水層)の劣化・損傷状況
  • モルタル面の劣化・損傷状況
  • パラペットの劣化・損傷の状況
  • 排水溝、ドレーンの劣化状況
  • 屋根の防火対策及び屋根ふき材の劣化状況
  • 機器や工作物(広告塔)、支持部分の劣化状況

   

建築物の内部

建築物の内部が、建築基準法にそっているかを目視と建築図面両方から調査します。また、防火区画や壁、床、天井などの劣化および損傷の状況と維持保全の状況、アスベスト対策などを調査します。

   

【検査内容】

  • 防火区画(面積・堅穴・異種用途・条例による区画)の状況
  • 常閉防火扉の作動の状況
  • 壁・床など躯体部分に著しい劣化や損傷・腐食が無いかの状況
  • 天井・特定天井の劣化および損傷の状況
  • 居室の採光、換気の状況
  • アスベストの使用有無、劣化状況

   

避難施設・非常用進入口

通路・廊下・出入口・屋上広場・避難バルコニー・階段・排煙設備・非常用進入口等について、災害時に安全に避難できるか、避難の支障となる物品等が放置されていないかを調査します。

   

【検査内容】

  • 通路、廊下、階段、出入口の幅員確保の状況、物品放置の有無
  • 屋上広場、避難バルコニーの確保の状況
  • 屋上広場の手すりや柵などの設置・劣化状況
  • 排煙設備(防煙区画・自然排煙口)の損傷・劣化・維持保全の状況
  • 排煙設備の作動状況
  • 非常用の進入口等の維持保全の状況
  • 非常用の照明装置の作動状況
  • 非常用エレベーターの設置状況

  

その他

特殊な構造の部材や免震装置、避雷針などの避雷設備、煙突等の劣化および損傷状況と維持保全の状況、地下街等について目視によって調査します。

   

【検査内容】

  • 膜構造建築物の部材等の劣化状況
  • 免震装置の劣化状況
  • 避雷針、避雷導線等の劣化・損傷状況
  • 煙突本体および建築物との接合部の状況
  • 煙突の損傷・劣化状況

特定建築物定期調査の頻度

敷地・地盤 3年に1回
建築物の外部 3年に1回
屋上および屋根 3年に1回
建築物の内部 3年に1回
避難施設・非常用進入口 3年に1回
その他 3年に1回

建築設備定期点検

設備異常が原因の災害から、建物利用者の安全を守るために行う法定点検です。「給排水設備」「換気設備」「非常用の照明装置」「排煙設備」といった建築設備の状態を調査・検査し、その結果を特定行政庁へ報告します。

(建築基準法第12条第3項)

ビルやマンション・学校など不特定多数の人々が利用する建物で災害が発生することを防ぐために実施する検査です。
検査は無資格ではできません「一級建築士」「二級建築士」の他に、特定の講習を受けて「建築設備検査員」といった資格を取得した担当者が行います。

対象となる施設

  • 不特定多数の人が利用する施設(美術館、事務所、映画館、旅館・ホテル、病院、百貨店、飲食店、病院、学校、博物館・美術館・図書館、公衆浴場など)
  • 200㎡以上、又は3階以上、又は地階にあるもの、又は、主階が1階にないもので100㎡超である場合(一例)
    ※特定行政庁により条件は異なります。必ず所在地の特定行政庁に確認してください。

建築設備定期点検の種類

建築設備定期検査では以下の4項目の検査が必要です。

   

給排水設備

衛生的な飲料水の提供と正常に排水を行うことが出来ているかの検査です。建物には、水道管より建物の中に水を送る「給水設備」と使用した水を下水道に流す「排水設備」があります。

   

【給水設備の検査】

  • 受水槽の設置場所が適正か
  • 高架水槽の設置場所が適正か
  • 加圧給水配管の設置場所が適正か
  • 運転の異常は無いか
  • 腐食・漏れが無いか

【排水設備】

  • 汚水槽の設置場所が適正か
  • 排水管等の設置場所が適正か
  • 運転の異常は無いか
  • 腐食・漏れが無いか

   

換気設備

室内の空気を新鮮に保つため、「換気設備」や「吸気設備」が正常に作動しているかの検査です。
検査を行わないことで人体に有害な一酸化炭素が発生する危険があります。そのため、生命を守るためにもとても大切な検査です。

   

【検査内容】

  • 換気フード等の換気状態に異常が無いか
  • 運転に異常が無いか
  • 風量を測定し作動に問題無いか
  • 防火ダンパーの作動に問題無いか

   

非常用の照明装置

非常用の照明装置は、停電時にバッテリー等の予備電源により30分以上点灯する照明です。非常用の照明装置が正常に作動することで、万一、火災が発生した時に停電時でもスムーズに出口へ避難を行ったり消火活動を行うことができます。
検査では、非常用の照明装置が30分間点灯できる状態になっているかどうか確認します。

   

【検査内容】

  • 点灯確認
  • 停電時にも明るさが確保できているかを照度計で照度測定
  • 障害物の確認

   

排煙設備

火災など不測の事態が起きた時に、排煙設備が室内で発生する煙等を建物外にきちんと排出できるようにしておくための検査です。火災が起きると一酸化炭素が発生します。一酸化炭素中毒により多くの人が亡くなっています。利用者を守るためにも、非常時に排煙設備が起動するよう検査が必要です。

   

【検査内容】

  • 障害物が無いか
  • 腐食が無いか
  • 設置状況は適正か
  • 異常なく作動するか
  • 排煙口の開閉に問題が無いか
  • 排気風量に問題が無いか

建築設備定期点検の頻度

給排水設備 1年に1回
換気設備 1年に1回
非常用の照明装置 1年に1回
排煙設備 1年に1回